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阪神なら報知、巨人ならデイリー!? プチ鹿島4月のスポーツ新聞時評。

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最近「新聞の読み比べの楽しさを語ってください」といろんなところで言われます。

 新聞を擬人化すれば“おじさん”だと思うのですが、各紙の論調の違いを「おじさんが、自分の信じる正義を日々主張していると思えば興味深い」とまず説明します。

 同じ案件でも新聞によって「テロ等準備罪」と「共謀罪」と呼び方が異なる。読者は自分の考えと合う新聞を読むことが多いはず。それは自然なことだと思うけど「今読んでる新聞と反対の論調の新聞も読むと面白いのでは?」とも提案しています。「相手側」の意見を読むことで発見もあるからだ。

 そこで具体例で出すのがスポーツ新聞だ。

 スポーツ紙によっては、推す球団がハッキリしている。

 たとえば「スポーツ報知」は巨人、「デイリースポーツ」は阪神

 「報知」は読売グループだから当然だろうけど「デイリー」は阪神と直接関係なくても推している。それがファンに伝わり、阪神ファンは「デイリー」をよく読む。情報が偏っているからこそファンは嬉しい。勝った日の翌日はお祭り騒ぎで褒めポイントが多い。

 でもこんなとき、巨人ファンは「デイリー」を、阪神ファンは「報知」をチェックしてみるといいと思うのだ。相手側の評価が「必要最小限のシンプルさ」で書かれているからだ。

「藤浪もいつかこんな投手になってくれたら……」

 たとえば昨年4月7日のデイリースポーツの名物コラム「松とら屋本舗」は巨人の菅野についてこう書いた。

《中盤以降は手も足も出なかった。硬軟自在。しかも本格派のそれです。敵ながら…いや褒めてたまるか。でも、感じてしまったんだから書かなきゃいけない。藤浪もいつかこんな投手になってくれたら、うれしい。》

 自軍のエースもいつかこんな投手になってくれたら、という最大限の褒め言葉。これを読めば「菅野ってホントにすごいんだな」と巨人ファンはあらためて知ることだろう。

 では、4月21日~23日におこなわれた今季初の東京ドーム「巨人-阪神戦」3連戦を、「報知」と「デイリー」はどう伝えたか。相手側について書いているポイントだけに注目してみた。

長嶋茂雄さんによるメッセンジャーへの見解を読む。

 第1戦は阪神勝利。

 というわけで「報知」をみてみよう。

 長嶋茂雄さんのコメントをまとめたコラムに阪神メッセンジャーの好投について書かれていた。

《マウンドに上がったメッセンジャーを見て、少し驚かされた。前年までとは明らかに体つきが違った。少なくとも3、4キロは体重を落としているように見えた。下半身をしっかり使っているため、ほとんどの球がしっかり指にかかって素晴らしいキレ味と抜群の制球を生んでいた。3、4年前の勢いを取り戻したような投球内容だった。》(4月22日)

「報知」のこの記事で今年のメッセンジャーはいかにコンディションが良いかわかる。阪神ファンは長嶋氏の見解を読んでワクワクすると思う。

阿部抜きで勝った巨人が、いかに脅威なのか?

 では第2戦。

 巨人が勝利した。

「デイリー」の「前トラ番キャップ・吉田風の取材ノート」という2面のコラムに注目した。タイトルは「内野手阿部の脅威」。

 この日の試合では巨人・阿部が先発オーダーから外れた。ベテランを休ませながら使う高橋由伸監督の起用法。

「深刻な故障のない阿部がベンチに座っていてくれる。助かるなあ…。これが紛れもない阪神サイドの本音である。」と書きつつ、阪神・矢野作戦兼バッテリーコーチのコメントを載せている。

《巨人側からすれば、こういう試合を取ればムードは良くなると思う。村田も使えるし、チームとして機能していく形になるでしょ。だから、こちらとしては逆に機能させないようにしないといけない。(略)阿部のいない試合を勝っておくのは大事だと思う。》

 しかしこの日勝ったのは巨人。

 「飛車落ち」で取ったこの日の1勝はただの1勝じゃない、とデイリーは書く。巨人側からすれば、阿部抜きの試合を勝つことが相手にとっていかに脅威かよくわかる記事でもある。

阿部慎之助の話をして最後は梅野隆で落とすデイリー。

「デイリー」のこのコラムには次の言葉が続く。

「不安をあおるわけじゃないけれど、司令塔の重荷が取れた阿部の脅威は今後間違いなく増していく」

「たとえ1試合でも鬼の居ぬ間に虎は勝っておかなければ…」

 このコラムでは他にも興味深いエピソードが載っている。2013年のオールスターのベンチで阪神藤井彰人と阿部はこんな雑談を交わしたという。

 藤井「捕手を10だとしたら、一塁はどんなものなの?」

 阿部「1…ないですね」

 捕手というポジションがいかに過酷かというエピソード紹介から、話はこうなる。

《なるほど、そう考えれば梅野隆の打撃不振もうなずける。》

 さすがデイリーのコラムである。

 最後は自軍の捕手の話題になるのである。でもこの阿部と藤井の会話エピソード、巨人ファンも読んだら面白いはずだ。

報知の名物コラム「仙ペン」のタイトルを考察。

 では第3戦にいこう。

 阪神が勝ち、3連戦を勝ち越した。

 報知の見出しには「福止めろ由伸監督」とあった。そう、「福止めろ」は阪神の福留にかかっている。

 この3連戦、福留は3戦6安打6打点。しかも3戦連続先制打という大活躍。

 そこで面白かったのは報知のコラム「仙ペン」だ。

 愛情のある辛口でアンチ巨人も読んだと言われる「激ペン」(故・白取晋記者が執筆)の流れを継ぐ名物コラムである。仙道学編集委員が執筆している。

 この日の出だしは《「おれは男だ!」というテレビドラマを覚えているだろうか。》

 約50年前のドラマは筆者もリアルタイムでは視聴していないが「自明の理をことさら強調するときは、それなりの裏があるはず」と書く。

「オレが巨人」と「オレが阪神」の深い深い意味。

 調べてみると第1回のサブタイトルが「ウーマン・パワーをやっつけろ!」だったという。男女平等の今からするとクラクラしてしまうタイトルだが、「男としての自信に揺らぎ」を感じたこの時代の空気なのだろうと筆者は推察する。

 そして、今季東京ドームの入り口に掲げられている巨人スローガンの「オレが巨人。」の話になる。

《当たり前のことを改めて言うってことは、半世紀前の男と同じく「ジャイアンツ・プライド」も危機に直面しているのだろうか。》

 これ、「報知」のコラムが書いているからこそ面白いと思うのだ。締めは以下。

《この3連戦に限っては、もうすぐ40歳の福留さんがすごすぎた。掛け値なしの『オレが阪神。』―。脱帽です。》

 この日の題名は「オレが阪神。」だった。

 阪神ファンこそ読んだら嬉しい内容。

 どうだろう、こうして「相手陣営」の論調や記事を読んでみると新聞はさらに楽しめると思いませんか? それはスポーツ新聞も一般紙も同じだと思うのです。

 以上、4月のスポーツ新聞時評でした。

 

非常に面白いコラムであるが、何点か気になる部分がある。

・関西のスポーツ紙は報知・中日を除き、世界の中心はタイガースである。

・デイリースポーツ広島版は、阪神ではなく、広島中心である。

とはいえ、このような比較記事は面白い。

今度はぜひ、中日スポーツとの比較を実施して欲しい。

 


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